業務委託における税金とは?源泉徴収と確定申告の注意点についても解説
業務委託契約をする場合、税金に関する知識は必須です。業務委託では、所得税、住民税、個人事業税、消費税などが課せられる可能性があります。確定申告に備えて、業務委託の税金の計算方法を知っておく必要があるでしょう。
本記事では、業務委託の報酬に課せられる可能性がある税金について紹介しています。また、業務委託の税金の計算方法や源泉徴収や確定申告の注意点についても解説しているため、業務委託契約を結んでいる人やこれからしようと考えている人は是非参考にしてみてください。
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業務委託契約とは
業務委託契約とは、発注者が業務を外部へ発注する際に受注者との間で取り交わす契約です。
フリーランスが業務委託契約を締結する場合、契約相手は法人になるのが一般的です。
民法上は、業務委託契約について直接の記述はありません。そのため、業務委託契約は民法第632条の委任契約と、民法第643条の請負契約のふたつを組み合わせたものといわれています。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089&keyword=%E6%B0%91%E6%B3%95/
委任契約
委任契約とは、法律行為の遂行を目的とした契約です。
民法第643条によると、「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と定義されています。
ポイントは、委任された業務の結果に関わらず対価が発生する点です。委任行為には、以下のような例があります。
・弁護士に訴訟行為の代理を依頼する(訴訟行為の委任)
・友人に買い物を依頼する(売買契約の委任)
委任契約は日常的に広く使われる契約であり、専門家へ依頼するケースを除き基本的に無償で成り立っています。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089&keyword=%E6%B0%91%E6%B3%95/
準委任契約
準委任契約とは、法律行為以外の事務作業を委託する契約です。
委任契約との違いは、委託内容が法律行為か否かで判断されます。たとえば、買い物の依頼は、法律行為(売買契約)のため委任契約です。一方、医師による診察は法律行為以外とみなされ、準委任契約とみなされます。
準委任契約は日常的に行う事務作業の依頼であり、委託した内容に対して法的責任はありません。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089&keyword=%E6%B0%91%E6%B3%95/
請負契約
請負契約とは、業務の結果を目的とした契約を指します。たとえば、次のような契約は請負契約の例として挙げられます。
・家具職人にイスの製作を依頼
・デザイン事務所に新しいホームページのデザインを発注
・トラック運転手に東京から名古屋まで商品の運送を依頼
委任契約との違いは、業務内容が完全に終了するまでは報酬を受け取れない点です。上の例であれば、家具職人は完成したイスの納品によって、はじめて対価を受け取れます。
委任・準委任・請負のなかから、業務によって適切な内容で契約しましょう。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089&keyword=%E6%B0%91%E6%B3%95/
業務委託の報酬に課せられる可能がある税金の種類
ここからは、業務委託の報酬に課せられる可能がある税金の種類について解説します。ご興味がある方は、参考にしてみてください。
所得税
所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。
所得税は、所得が多くなるほど税率が高くなる累進課税制度となっています。業務委託契約の場合は確定申告の際に、自分で税額を計算して申告します。確定申告を簡単に済ませるために、近年ではクラウド会計ソフトを利用するフリーランスも増えています。
なお、会社員の給与所得のみであれば、振り込み前に会社が天引きする源泉徴収があるため、自分で手続きする必要はありません。
出典:所得税のしくみ|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_1.htm
住民税
住民税は、道府県民税と市町村民税を合わせたもので、それぞれを住んでいる自治体に納めます。
住民税の負担額は前年の所得に応じて変動し、所得が多いほど税額がアップする仕組みです。
業務委託契約の場合は、確定申告に応じて納税額が決定するため、自身で税額を計算する必要はありません。6月ごろ自宅に納付書が届き、金融機関の窓口やコンビニなど、指定の方法で支払います。
出典:税の種類と分類|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page02.htm
個人事業税
個人事業税とは、個人で行った事業所得に対して課される税金です。
税率は事業によって3〜5%と異なるため、業務委託の内容によって税額が変わる点に注意しましょう。住民税と同様、確定申告に応じて納税額が決定するため、自身で税額を計算する必要はありません。
出典:個人事業税|総務省
参照:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_07.html
消費税
業務委託契約の売上は、消費税の対象になります。
ただし、個人事業主は売上高によって消費税の納税対象者から外れるケースがある点に留意しておきましょう。ポイントは2年前の売上高です。
たとえば、以下のどちらかに該当する個人事業主は、令和5年に消費税の課税対象となります。
・令和3年の課税売上高が1,000万円を超える場合
・令和4年の1月1日〜6月30日に課税売上高が1,000万円を超える場合
ほとんどの個人事業主が課税対象にならない「免税事業者」に該当する可能性が高いでしょう。とはいえ、もしも課税対象者になっていると忘れた頃に消費税を請求されてしまうため、知識として頭にいれておく必要があります。
出典:消費税のしくみ|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm
業務委託の税金の計算方法
ここからは、業務委託の税金の計算方法について解説します。暗記する必要はないため、ぜひ参考にしてみてください。
消費税の計算方法
消費税の課税対象になる可能性があるのは、事業開始後3年を経過した個人事業主です。消費税の計算方法は原則に従う一般課税と、簡易な計算方法で行う簡易課税制度のふたつがあります。
まず、一般課税を使った消費税の計算方法は以下の通りです。
消費税額=課税売上高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)-課税仕入高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)
次に、簡易課税制度を使った計算方法は以下の通りです。
消費税額=課税売上高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)-課税仕入高×消費税率(軽減税率8%、標準税率10%)×みなし仕入率
課税対象者に該当し、正確な税額を計算したい場合は専門家への依頼も検討しましょう。
出典:消費税のしくみ|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm
住民税の計算方法
住民税は、前年の所得金額に応じて金額が変わる所得割と、所得金額に関わらず定額で課税される均等割を合算した金額を納税します。
まず均等割の税額は、一般的に次の3つを合算した5,000円です。
・市区町村民税3,000円
・都道府県民税1,000円
・2014~2023年度は復興財源確保の税制措置として500円ずつ加算
次に所得割の標準税率は市区町村民税率6%、都道府県民税率4%の合計10%です。
住民税の計算方法は、以下の通りです。
・所得割額=課税所得金額×住民税率(都道府県民税率+市区町村民税率)-税額控除
・均等割額=都道府県民税額+市区町村民税額
・住民税額=所得割額+均等割額
会社員の場合は源泉徴収で毎月引かれているため、住民税の支払いをさほど意識していない方もいるでしょう。支払いの時期には、ある程度まとまった金額が必要になると覚えておく必要があります。
出典:個人住民税|東京都主税局
参照:https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html
出典:税の種類と分類|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page02.htm
業務委託で知っておきたい源泉徴収と確定申告の注意点
ここからは、業務委託で知っておきたい源泉徴収と確定申告の注意点について解説します。ご興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
源泉徴収の対象となる業務
業務委託契約を締結した場合、業務内容によっては源泉徴収の対象になる可能性があります。
報酬・料金などの支払いを受ける者が個人の場合、源泉徴収の対象となる範囲は国税庁のホームページで確認できます。
請け負っている内容に該当業務がないかチェックしておきましょう。
出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
源泉徴収税額の計算方法
源泉徴収額の計算方法は、課税対象となる金額によって2つのパターンがあります。
1.課税対象となる金額が100万円以内
・計算方法:課税対象金額×10.21%
・計算例:80万円の原稿料を支払う場合
80万×0.1021=81,680円
2.課税対象となる金額が100万円以上
・計算方法:(課税対象金額-100万円)×20.42%+102,100円
・計算例:200万円の原稿料を支払う場合
(200万円-100万円)×20.42%+102,100円=306,300円
出典:No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2795.htm
交通費に注意
交通費の名目で報酬が支払われていても、源泉徴収の対象となる場合があります。
ポイントは、支払いの実質的な意味合いが報酬・料金などと同じか否かです。意味合いが同じ場合は源泉徴収の対象になります。しかし、報酬・料金などの支払者が通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金などに含めなくても構いません。
業務委託契約で支払う経費をどちらが負担するかは、契約時に取り決めておくとトラブルを回避できるでしょう。
出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
確定申告で節税が可能となる場合がある
「青色申告特別控除」を受けると、確定申告が節税につながるケースがあります。なぜなら課税対象となる所得が減るからです。
青色申告特別控除では、最大65万円を所得から控除できます。e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用しないと10万円分の控除が受けられないなどの要件には注意が必要です。
詳細は国税庁のホームページを確認してみましょう。
出典:No.2072 青色申告特別控除|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
確定申告を忘れた場合はどうなる?
確定申告を忘れた場合、申告によって収める税金のほかにペナルティとして無申告加算税が課されます。
原則として、各年分の無申告加算税は納付すべき税額に対し、以下の割合を乗じて計算した金額となります。
・50万円まで:15%
・50万円を超える部分:20%
また、期限後申告によって収める税金には、延滞税が発生する場合があります。確定申告を忘れたと気づいた時点で、早急に手続きを行いましょう。
出典:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
確定申告が必要ない場合とは?
給与所得と退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下の場合は、業務委託契約を結んでいても原則として確定申告が不要です。
しかし、前述したように確定申告が必要にもかかわらず手続きをしなかった場合、多くのペナルティが待っています。まずは確定申告する前提で考えておくほうが、リスクを回避できるといえるでしょう。
出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm
業務委託に関わる税金の仕組みを理解しよう
フリーランスにとって業務委託の案件は大きな収入源のひとつといえます。税金関係の知識が不安でも、ひとつずつ読み解いていくと簡単に理解できるようになります。
ぜひこの記事を参考に税金知識を攻略して、業務委託案件にチャレンジしてみてください。