フリーランスでも開業届が必要?書き方や提出するタイミングも解説
フリーランスになるにあたって、開業届を提出する義務はありません。しかし、節税対策として青色申告ができなかったり、屋号付きの事業用銀行を開設できなかったりします。
本記事では、フリーランスが開業届を提出するメリットを中心に、開業届を提出するタイミング、書き方、提出の前後で必要なことを詳しく解説しています。まだ開業届を出していないフリーランスの方、これからフリーランスを目指す方は必見です。
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フリーランスは開業届が必要?
フリーランスが開業届を出さなくても罰せられることはありませんが、節税効果の高い青色申告ができない、屋号付きの事業用銀行口座を開設できないなどの不便があります。
所得税法第229条では、「事業を開始した時には、その事実があった日から1ヶ月以内に開業届を出すこと」という記載があります。中には開業届を出さずにフリーランスとして働いている人もいますが、開業届の提出は義務のため、速やかに手続きしましょう。
出典|参照:No.2070 青色申告制度|国税庁
出典|参照:所得税法 | e-Gov法令検索
開業届を出すメリット
開業届の提出はめんどくさいと感じるフリーランスもいるでしょう。しかし、フリーランスが開業届を出すことには、様々なメリットがあります。
フリーランスが開業届を出す主なメリットは、次の通りです。メリットをよく理解し、開業届を出すか検討しましょう。
- 社会的信用が得られる
- 家族に給与を支払った場合経費として計上できる
- 青色申告が可能になる
社会的信用が得られる
開業届を提出すると、職業を証明でき、社会的信用が得られるというメリットがあります。
会社員であれば、在籍証明書や社員証を発行してもらうことで、職業を証明することが可能です。しかし、フリーランスには職業を証明できるものがありません。
開業届を出せば「開業届の控え」を発行してもらえます。開業届の控えは、個人で事業を営んでいることを証明書できるため、社会的信用を得られるでしょう。
社会的信用を得られることで、融資の申し込みやクレジットカードの作成、賃貸契約を結ぶことが可能になるなど様々な恩恵を受けられます。
家族に給与を支払った場合経費として計上できる
家族に事業をサポートしてもらっている場合、開業届の提出とともに「青色事業専従者給与に関する届出書」を出すことにより、家族に支払う給与を全額、経費に計上できます。
開業届を出さずに白色申告でも「事業専従者控除」を受けられますが、控除額は配偶者でも最大86万円です。開業届を出し、家族を青色事業専従者とする方が、節税効果が高いでしょう。
青色専従事業者給与や事業専従者控除を受けると、配偶者控除や扶養控除の対象にはならなくなるため注意が必要です。
出典|参照:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
青色申告が可能になる
確定申告には、白色申告と青色申告があります。開業届の提出が青色申告するための条件です。
青色申告すると、最大65万円の青色申告特別控除を受けられ、さらに赤字を翌年以後3年間繰り越せるというメリットを受けられます。どちらも白色申告では、受けられないメリットです。
節税効果を高めたいと考えるのであれば、開業届を提出する時に、一緒に「青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出して、青色申告しましょう。
出典|参照:No.2070 青色申告制度|国税庁
出典|参照:No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度|国税庁
開業届を出すデメリット
フリーランスが開業届を出すデメリットの一つに、失業手当の対象外になってしまうことがあります。会社を辞めてフリーランスになった場合、失業手当の受給手続きをしている人もいるでしょう。
失業手当を受給するためには、「失業状態であること」「積極的に求職活動していること」などの条件を満たさなくてはいけません。しかし、開業届を出すと、失業状態でも、求職活動している状態でもなくなるため、失業手当の対象外になります。
失業手当を受給している人は、開業届を出すタイミングを考えましょう。
出典|参照:よくあるご質問(雇用保険について)|ハローワークインターネットサービス
開業届を提出するタイミングは?
開業届は原則として「不動産所得・事業所得・山林所得のいずれかが発生してから1ヶ月以内」に提出しなければなりません。しかし、実際はある程度自由に提出するタイミングを調節することが可能です。
収入発生後に開業届を提出した場合、開業届が受理されるよりも前の収入は雑収入になってしまいます。売上にかかる経費などが申請出来なくなる可能性があるため、開業届は、事業による収入が発生する前に提出しておくのがおすすめです。
失業保険給付を受給する場合
退職直後に開業届を提出すると失業保険給付を受給できないケースが多いです。
フリーランスとして働くために退職し、失業保険給付を受給する場合、失業保険給付の支給に約3か月かかります。そのため、失業保険給付をきちんと受給したい方は、退職直後の開業届提出は避けましょう。
なお、場合によっては、退職直後の開業でも再就職手当は受給することが可能です。退職・開業届提出前に再就職手当の受給に関して、しっかり確認しておくことをおすすめします。
2~3月の提出は避ける
フリーランスとして働くには、税金の手続きなども必要になり、開業に関してわからないことを税務署で相談しながら手続きを進めたいという人も多いでしょう。
税務署は毎年2月中旬から3月中旬にかけて、確定申告があり、繁忙期となります。2月上旬から準備が始まり、3月後半まで事務処理などがあるため、税務署で開業届を含む開業の手続きを進めたい場合が2~3月を避けて提出しましょう。
開業後は年内に提出
開業後、年をまたいでの開業届提出は避けましょう。
開業した年に開業届を提出しなければ、開業した年に事業で発生した収入は青色申告の対象外となってしまい、最大65万円の特別控除が適用されなくなります。
開業後1か月以内の提出が義務付けられていますが、罰則が設けられていないため、後回しにして提出が遅れたというケースが多々あります。罰則はありませんが、開業後は1か月以内に開業届を提出するようにしましょう。
出典|参照:No.2072 青色申告特別控除|国税庁
開業届の書き方
開業届は最寄りの税務署の窓口で受け取ることや、国税庁ホームページからもダウンロードできます。入手した開業届の具体的な書き方は、以下の通りです。
1.開業届の左上にある、「税務署長」の右側に所轄の税務署を記載し、その下に提出日を記載します。提出日は開業から1ヶ月以内にする決まりがあるため、注意しましょう。
2.納税地は、基本的に開業届を出す人の自宅がある「住所地」にします。ただ、事務所や店舗を納税地にしたい場合には、「事業所等」を選択し、納税地とすることも可能です。また、海外に居住している人が国内で事業を開始する場合には、「居住地」を選択します。
納税地を自宅にした場合は、「上記以外の住所地・事業所等」の欄に、事務所や店舗の住所を記載しましょう。
3.氏名・フリガナ・生年月日には、あなたの名前と生年月日を正確に記載します。
4.個人番号には、マイナンバーカードや通知カードに記載された、自分のマイナンバーを正確に記載してください。
5.職業には、エンジニア・ライターなど客観的に分かる業種を記載します。
6.屋号には、事業の名称や店舗の名前を記載しますが、特に、屋号がない場合には空欄のままで構いません。
7.届出の区分は、「開業」を選択するだけで大丈夫です。
8.所得の種類は、山林や不動産による所得でない場合には、事業所得を選択します。
9.開業・廃業等日は、提出日から遡って1ヶ月以内の開業日を記載してください。
10.事業所等を新増設、移転、廃止した場合/廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合、新規開業の場合は記載不要です。
11.開業・廃業に伴う届出書の提出の有無の欄は、青色申告に関する書類や課税に関する書類を提出する場合に選択します。
12.事業の概要には、事業の内容を具体的に記載してください。
13.給与等の支払いの状況には、雇用する予定がある人を記載し、誰も雇わない場合には記載しません。
14.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無は、従業員を雇用する予定がある場合に、有無を選択できます。
15.給与支払を開始する年月日は、従業員に給与を支払う場合にのみ記載してください。
出典|参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
開業届を提出する時に必要なもの
完成した開業届は、所轄の税務署に郵送もしくは持参して提出します。税務署に提出する際には、開業届以外に次に掲げるものが必要です。
必要なものが揃っていないと手続きに時間がかかってしまいます。必要なものを事前に揃えてから、開業届を提出しましょう。
印鑑
令和3年度の税制改正により令和3年4月1日以降、開業届への押印は廃止されています。しかし、間違いや書き直しが見つかった場合に、訂正印が必要になるケースもあります。念のため、印鑑を持参しておいた方が良いでしょう。
開業届の提出においては、適切な印鑑の使用と正確な押印がスムーズな手続きを行うために欠かせない要素となります。印鑑は実印や銀行印など有効です。詳しくは税務署に問い合わせるなどして間違いがないようにしましょう。
出典|参照:税務署窓口における押印の取扱いについて|国税庁
マイナンバーカード
開業届には、12桁のマイナンバー(個人番号)を記載しなくてはなりません。税務署の窓口では、開業届に記載されたマイナンバーが本人のものか確認するために、マイナンバーカードの提示が義務付けられています。
マイナンバーカードを持っていない人は、通知カードやマイナンバーの記載がある住民票の写しまたは住民票記載事項証明書に加え、運転免許所やパスポート、公的医療保険証などが必要です。
郵送で開業届を提出する場合、マイナンバーが分かるもののコピーや本人確認ができる書類のコピーを同封してください。
出典|参照:マイナンバー(個人番号)制度・マイナンバーカード|デジタル庁
出典|参照:番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い|国税庁
青色申告承認申請書
青色申告で確定申告する予定の人は、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出しましょう。
承認申請書には、事業者の基本情報、事業の内容、所得の計算方法、青色申告特例を適用する旨の申請などが記載されます。
青色申告特例を適用するためには、所得が一定の金額以下であること、事業の内容が特定の範囲内であること、適用の申請を行っていることなど、条件があります。
青色申告承認申請書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。税務署に行く前に作成しておくと、手続きがスムーズに進むでしょう。
出典|参照:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
開業届の提出期限
開業届は、事業の開始から1ヶ月以内に所轄の税務署に提出します。ただし、開業届の提出期限が土曜、日曜、祝日等に当たる場合には、これらの日の翌日が期限です。開業届は期間内に提出しましょう。
出典|参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
開業届の提出方法
前述したように、開業届を書き終えたらマイナンバーカードなど必要書類を揃えて、所轄の税務署に郵送または持参して提出します。所管の税務署とは、原則、納税地です。つまり、開業届を提出しようとしている人の住所地を管轄している税務署になります。
事業所や店舗などを納税地にしたい場合には、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」が必要です。
出典|参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
出典|参照:[手続名]所得税・消費税の納税地の変更に関する届出手続|国税庁
開業届を提出したあと行わなければいけないこと
フリーランスになったあとに行うことは、開業届を提出することだけではありません。ここからは、開業届を提出したあとに行わなければいけないことを紹介していきます。
届出の期限が決まっているものもあるため、速やかに手続きしましょう。
国民年金への加入
会社員からフリーランスに転身した人は、厚生年金から国民年金へ切り替える手続きをする必要があります。
住所地の市役所もしくは町村役場で、退職日の翌日から14日以内に手続きをしなくてはいけません。一部の地域では、インターネットを利用したオンライン申請が可能な場合があります。その場合、地方自治体のウェブサイトや専用のオンラインサービスを利用して手続きを進めます。
手続きには、本人確認書類や加入申請書、事業の内容や所得に関する情報、基礎年金番号通知書もしくは年金手帳等の基礎年金番号が分かる書類が必要です。
出典|参照:国民年金に加入するための手続き|日本年金機構
資金調達や資金繰り
フリーランスになり、自己資金だけで開業することが難しい場合、融資を受けるなどして資金調達したり、資金繰りについて考えたりする必要があります。
実績のないフリーランスが受けられる融資としては、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や自治体の融資制度があります。
新創業融資制度は、新たに事業を始める人や事業開始後税務申告を2期終えていない人が、無担保・無保証人で利用できる融資です。融資限度額は3,000万円で、事業開始後1期以内の人は、創業資金総額の10分の1以上、自己資金がないと融資を受けられません。
出典|参照:新創業融資制度|日本政策金融公庫
国民健康保険への加入
会社員からフリーランスになった場合、これまで加入していた健康保険を任意継続するか、国民健康保険に加入するか決めなくてはいけません。
健康保険を任意継続する場合には、事業主がこれまで負担していた保険料を自分で支払う必要があるため、注意が必要です。
国民健康保険は、被用者保険、後期高齢者医療制度に加入していない人を対象としたものです。
国民健康保険に新たに加入する場合には、住所地の市役所または町村役場で14日以内に手続きしなくてはいけません。手続きには、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類が必要です。
出典|参照:国民健康保険制度|厚生労働省
出典|参照:会社を退職した時に、国民健康保険に加入するためにどのような手続が必要ですか。|金沢市
開業届に関する正しい知識を身につけよう
開業届は新しい事業を始める際に提出する重要な書類です。正確かつ適切に提出することは、法的な義務であり、スムーズな事業運営の基盤です。
フリーランスが開業届を提出しなくても特に罰則はありませんが、適切な提出は、青色申告が可能になるなど節税効果が高くなるメリットがあり、社会的信用も得られます。最新の法改正や手続きの変更点にも注意を払い、正確な知識を身につけて事業を適切に開始することが成功への第一歩です。
開業届の知識を身につけて、未提出の人は速やかに提出しましょう。
Midworks おすすめの案件例
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