「個人事業主から業務委託契約の解除はできる?」
「業務委託契約の解除を検討しているけれど、解除方法が知りたい」
「業務委託契約の解除で気を付けるポイントって何?」
個人事業主として働いていると、病気やケガなどによるやむを得ない事情や契約満了などで業務委託契約の解除を検討することがあります。
業務委託契約の解除について、実際に検討する前まではその方法を知らないという人が多いのではないでしょうか。
本記事では業務委託契約の形態やその特徴を踏まえながら、個人事業主が結ぶ業務委託契約のメリット・デメリット、また契約の解除方法や手順などを紹介していきます。
業務委託契約の解除に関する知識を身に付けることで、自身とクライアントにとって納得のいく形を目指せます。
個人事業主が行う業務委託契約の解除について知識を深めたい人は、ぜひ本記事を一読してみてください。
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個人事業主の業務委託契約とは
企業が仕事を社外に発注する際、その発注先に個人事業主を選ぶことがあります。個人事業主とは税務署に対して開業届を提出し、継続して事業を行う個人のことを指しています。
この個人事業主と混同されやすいのがフリーランスで、特定の企業や団体などの組織に属さずに業務を行う「働き方」のことをいいます。そのため、フリーランスには個人だけでなく、個人事業主と法人も含まれるのです。
以下ではフリーランスではなく、個人事業主が結ぶ業務委託契約(企業と雇用契約を結ばずに、特定の業務を受託し報酬を得る仕事の仕方)について紹介していきます。
請負契約
業務委託契約は、法律上規定された正式な名称ではありません。業務委託契約は実務上の通称であり、その形態は請負契約と委任(あるいは準委任)契約に分かれます。
民法では、請負は当事者の一方が特定の業務を完成することを約し、相手がその業務の結果(成果物)に対して報酬を支払うことを約することにより、その効力を生じると定めています。
そのため、請負人は受託した業務の結果に対する責任を負わなければなりません。この責任を「契約内容不適合の担保責任」といい、提出した成果物が契約内容不適合となる場合には修理・補正、損害賠償、契約の解除などの責任を負うことが定められています。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
出典:民法改正による新制度(第2回)- 請負契約|独立行政法人中小企業基盤整備機構
参照:https://j-net21.smrj.go.jp/law/20210721.html
委任契約
委任契約とは、特定の法律行為に関する業務を遂行することを定めた契約です。この委任契約は前述の請負契約とは異なり、報酬は成果物に対して支払われるのではなく労働に対して支払われます。
そのため、契約内容不適合による担保責任はありません。その代わりに、民法で定められている「善管注意義務(善良な管理者の注意の義務)」が発生します。
この善管注意義務では、受任者が法律行為や特定の事務などの管理を行う場合には、受任者の職業や地位にある者として「通常要求される程度の注意義務」を払わなければならないとされています。
また、委任契約では、受任者は委任者(クライアント)の許諾を得たときや、やむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任できません。そのため、委任された業務を下請けや外注に再委任することもできないため注意が必要です。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
出典:善管注意義務|企業年金連合会
参照:https://www.pfa.or.jp/yogoshu/se/se10.html
準委任契約
準委任は委任契約とは異なり、法律行為以外の特定の業務を遂行することを定めた契約です。
この準委任契約は法律行為を除く業務を扱うという点以外では、前述の委任契約と同じになります。そのため、個人事業主が行う業務委託契約では準委任契約が多くなるでしょう。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
業務委託契約のメリット・デメリット
ここまでに、業務委託契約の形態とそれぞれの特徴や注意点についてみてきました。また、契約の種類に関わらず、業務委託で働く際のメリットとデメリットが存在します。
以下で、詳しく紹介するためチェックしてみてください。
メリット
個人事業主が業務委託契約を行う際のメリットは、以下の5つが挙げられます。
1.得意な分野でスキルや経験を活かせる
2.働き方の自由度が高い
3.頑張り次第で収入アップを目指せる
4.人間関係の負担が少ない
5.希望しない業務依頼の場合には辞退できる
まず、業務委託契約の大きなメリットは自分の得意とする分野で、今までに培ってきたスキルや経験を活かせる点です。さらに、スキルアップにつながる案件も引き受けることで、収入を得ながら経験を積めます。
次に、働き方の自由度が高いことです。業務委託契約では企業とは雇用関係にないため、業務に対して指揮命令されることはありません。そのため、個人事業主は時間や場所、業務の進め方などを自分で決めて行えます。
また、業務委託契約では、頑張り次第で収入アップを目指すことが可能です。高いスキルや実績を積むことによって提供する成果物の価値を上げられ、その結果収入をアップできます。
業務委託契約の場合、業務の内容によっては在宅で仕事を行えるため、人との関わりが少なくなり対人関係のトラブルや悩みも減らせるでしょう。
そして、業務委託契約では、クライアントには指揮命令権がありません。そのため、個人事業主は望まない業務を依頼された場合には辞退できます。
デメリット
個人事業主が業務委託契約を行う際のデメリットは、以下の3つが挙げられます。
1.労働基準法が適用されない
2.企業との契約や報酬交渉、事務処理などを自分で行わなければならない
3.収入や雇用が不安定
業務委託契約の大きなデメリットが、個人事業主に対して労働基準法が適用されない点です。労働基準法とは労働条件に関する最低基準を定めた法律になり、労働契約や賃金、労働時間、休日および年次有給休暇など労働者の生存権の保障を目的としています。
つまり、業務委託契約では、労働基準法で定められている様々な保障を受けられないということになります。
また、業務委託契約の場合、クライアントとの契約や報酬交渉を含め、確定申告や国民健康保険などへの加入手続きといった事務手続きを自身で行う必要があります。
そして、業務委託契約では自分自身で仕事を見つけて、その業務を完遂しなければ報酬が得られません。仕事を自分で選べる一方で、安定した雇用と収入を得にくい側面もあります。
出典:労働基準に関する法制度|厚生労働省
参照:https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/law/roudoukijun.html
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個人事業主が委託契約を解除する方法
様々な理由や事情によって、個人事業主が業務委託契約を解除したいと考える場合があるでしょう。
解除を検討するとき、クライアントと取り交わした契約書の内容について確認したり、協議の場を設ける必要があります。以下で、業務委託契約の解除方法についてみていきます。
契約書を確認する
まずは、契約書に記載されている解除条項の内容を確認してください。しかしながら、解除条件を決めておらず、その条項が記載されていない場合もあります。
解除条項がないことで解除手続きが進まず、クライアントとトラブルに発展してしまう可能性も少なくありません。そのときには、クライアントときちんと協議する場を設けて、慎重に対応することが大切です。
相手方と協議する
契約解除の協議を行う際、円満な話し合いにするために必要なものは何かと悩む人もいるのではないでしょうか。
以下では、双方にとって納得のいく協議とするために必要法律を紹介していきます。
話し合いであっても法律の知識が求められる
個人事業主が業務委託契約を解除する場合、クライアントと協議し契約解除に対して双方が同意する必要があります。
協議の際に法律を参考にしながら進めたり、あるいは合意に至らなかったりする場合には法律の知識が求められます。請負契約と委任(準委任)とでは解除に対する権利や条件が異なるため、しっかりと把握しておくことが大切です。
個人事業主が契約解除する手順
実際に、個人事業主が業務委託契約を解除する際、自身の都合かクライアント側の都合かによって契約解除の手順に違いがあります。
以下では、それぞれのケースによって進めていく手順について紹介していきます。
個人事業主側の都合による場合
個人事業主側から契約解除を申し出る場合、契約の形態によって解除手続きが異なります。
請負契約では仕事の「成果物」が報酬対象となるため、個人事業主の都合による契約途中での解除はできません。そのため、途中解除を依頼した際には、クライアントから損害を賠償するようにいわれるケースもあるため注意が必要です。
また、委任(準委任)契約ではクライアントにとって不利な時期を除き、いつでも契約を解除できます。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
相手側の契約違反が理由の場合
個人事業主が業務委託を受けている場合、クライアント側が報酬の未払いや業務妨害など契約違反を行うケースもあります。以下では、こうした契約違反を理由とした場合における、契約解除の手順について紹介します。
契約履行の催告
クライアント側の契約違反による契約の解除手順は、最初にクライアントに対して契約履行の催告を行うことです。
たとえば、支払い期日が過ぎても契約上の支払いがされていない場合や、個人事業主へ提供すべき資料などの情報が提供されていない場合などには、契約通りの仕事を行うようにと期日を決めて催告する流れになります。
契約解除の通知書を送付
クライアント側に対して、契約履行の催告を通知しても対応や改善がみられない場合には、契約解除の通知書(業務委託解除通知)を送付することになります。この通知書には、以下の一般的な記載事項があります。
・契約解除通知書であること
・日付
・宛名と差出人
・業務委託者と受託者
・契約タイトル、契約期間、契約締結日
・契約解除を実施する日付
・契約解除の意思
・契約解除の理由
上記を記載した通知書を、配達記録が残る「内容証明郵便」で送付するようにしましょう。
Midworksでは、キャリア相談も可能で転職することも視野にいれている場合は、ぜひ活用してみてください。
個人事業主が契約解除するときのポイント
ここまでに、業務委託契約における解除の方法や手順について紹介してきました。
以下では契約解除の方法など踏まえて、実際に契約解除を行うためのポイントを詳しくみていきます。契約解除を検討する場合には、ぜひ参考にしてみてください。
委任契約の場合
委任契約は業務の遂行自体が目的となるため、契約期間が設定されているケースが多くなっています。場合によっては、長期間にわたって継続することを予定した契約もあります。
以下では、こうした長期にわたる委任契約を解除する際のポイントについてみていきましょう。
長期にわたる委任契約は予告期間を設ける
委任契約の中には短い期間のみではなく、中長期にわたって委任する契約のものもあります。長い期間委任契約を結んでいると、今までの関係から今後も継続していくという期待が生じてしまいます。
これを学説や裁判例で認められている「継続的契約の法理」といい、長期間継続してきた契約は、たとえ契約でその期間が決められていても、やむを得ない事由を除き、一方的に契約を終了させることはできないというものです。
そのため、契約を解除する場合には一定の予告期間を設け、クライアントに対して配慮をする必要があります。
出典:継続的契約の法理|弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
参照:https://www.saitama-bengoshi.com/good/20201201/
請負契約の場合
請負契約の場合、自身の都合を除いた理由で契約を解除できる条件は2つあります。
注文者が、支払い期日を超過しても契約上の報酬が支払われないなどの契約違反をした場合と、注文者自身が破産手続きを開始の決定を受けた場合です。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
報酬について
個人事業主が業務委託の契約解除をする前に、行った業務の報酬について確認することをおすすめします。契約の形態によって、報酬を請求できる範囲に違いがあるため注意が必要です。
請負契約の場合、一般的に以下の範囲で報酬を請求することが可能です。
1.受託した業務のうち完成部分の割合に応じた代金
2.未完成部分に関する個人事業主の支出実費
3.契約が実行された場合に得られる予定だった、個人事業主の逸失利益に対する損害賠償
一方で委任(準委任)契約の場合、委任事務を履行した後でなければクライアントに対して報酬を請求できません。このとき、契約期間によって報酬を定めていれば、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求することが可能です。
また、委任された事務の履行によって得られた成果に対して報酬を支払う、といった委任契約を取り交わしている場合においても、その成果の引き渡しが必要なときには成果と引き換えに請求できます。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
損害賠償項目等の確認
個人事業主が業務委託契約を解除する場合、クライアント側の都合や責任が理由となることもあります。その際には、個人事業主はクライアントに対して損害賠償を請求することが可能です。
以下では、個人事業主が行える損害賠償についてみていきましょう。
契約違反の程度
個人事業主側から契約を解除できない「請負」の場合でも、クライアント側の契約違反が原因であれば契約を解除することが可能です。
しかしながら、その違反の程度が軽微な場合には、契約解除の申し出を慎重に行うことをおすすめします。ケースによっては、クライアントから自己都合による解約を回避したいのかと誤解されてしまうおそれがあるためです。
請負人が請求できる範囲
請負契約を行っている場合、仕事によってはクライアント側の都合で解約されることがあります。個人事業主は、一般的に以下の範囲で損害賠償を請求することが可能です。
・クライアントの破産手続き開始による契約の解除
・契約が実行された場合に得られる予定だった、個人事業主の逸失利益に対する損害賠償
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
途中解除を回避する方策の事前検討
業務委託契約のうち、委任契約では相手に不利な時期を除いて、各当事者がいつでも契約を解除できます。そのため、やむを得ない事由の場合には、契約の途中で解除を打診されるケースもあるのです。
契約の途中解除を避けるためにも、契約の段階で途中解除についてもしっかりと検討しておくことが大切です。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
契約の見直しの検討
業務委託契約を解除する前に一度、その契約の内容や条件を見直してみましょう。個人事業主の場合、会社や団体のような後ろ盾がなく、個人で仕事を1つずつ獲得していかなければなりません。
一度結んだ契約に対して、やむを得ない事由やクライアント側が納得できる理由もなく途中解除してしまうことで、現在のクライアントはもちろんのこと、今後の仕事の受注にも支障をきたしてしまう可能があります。
契約について疑問点や不安なことはクライアントと協議し、お互いに納得のいく形にすることが大切です。
記録・証拠の保存
クライアントと契約解除に際して協議を行う場合には、議事録などの記録を残しておきましょう。
また、業務委託された仕事の記録や、クライアントとの打ち合わせの記録なども取っておくことで契約解除の協議の場ではもちろんのこと、裁判に発展してしまったときにも証拠として提出できます。
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個人事業主が契約解除前に確認すべき事項
業務委託契約を解除する際、できる限り円満な形で契約解除したいと考える人が多いのではないでしょうか。双方で納得のいく契約解除を目指すために、事前に確認しておきたいポイントがあります。
以下で、詳しくみていきましょう。
自己の契約形態
前述してきたように、業務委託契約の形態には請負契約と委任(準委任)契約があります。
各々の目的や報酬対象、また求められる責任は異なるため、契約解除を申し出る前には自己の契約形態を改めて確認しておくことが大切です。
報酬の支払い
契約を解除する際には、報酬についても改めて確認しておきましょう。個人事業主の場合、契約ごとで報酬を得るため、契約の形態によっては「契約解除=報酬ゼロ」という事態に陥ってしまいます。
そのため、契約時の報酬支払いに対する条件や時期などをチェックしておくことが大切です。
出典:民法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
クライアントとの信頼関係
個人事業主の場合、会社員や法人化された個人事業主などのように、会社や組織からの後ろ盾がないため社会的信用度が低い傾向にあります。個人事業主が仕事を獲得していくには、クライアントからの信用を得て信頼関係を築くことが大切です。
そのため、契約途中での解除だけでなく、契約期間満期後の解除についても慎重に検討しておくことをおすすめします。
個人事業主の業務委託の契約解除方法を理解しよう
今回の記事では、個人事業主が業務委託契約を解除するための知識や方法などについて詳しく紹介してきました。
業務委託契約を解除する際には自身の契約形態や報酬支払だけでなく、現在契約を結んでいるクライアントとの信頼関係などを含めて、十分に検討しておくことが大切です。
業務委託契約の解除を進める際には、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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