定款変更する際に必要な費用や注意事項を解説!
会社を設立する方法は複数種類ありますが、いずれの場合も必要とされるのが「定款」です。会社設立を考え初めて「定款」というものの存在を知った、会社員の頃は見たことも聞いたこともなかったという方もいるでしょう。
この記事では、「定款」というものについて内容を解説しつつ、定款を作成したあとも変更が必要になる場面や、変更するときに必要になる費用などについても解説していきます。
一読していただければ、定款の概略や、どのようなときにどのような手順で変更が必要になるのか、どのくらいの費用が必要なのかを理解できます。
この記事を参考にあらかじめ手順や費用を把握しておき、いざというときに手続きが漏れることがないよう対応手順を策定しておきましょう。
目次
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定款とは
定款は、会社を設立するときに必ず作成するもので、会社の営業目的や名称、所在地から運営のルールなどをまとめた一種の規約書です。
株式会社や合同会社といった「会社」組織だけでなく、公益法人や財団法人といった「法人」、農協や漁協などの「組合」でも必要になります。
現代では紙に印刷された定款だけでなく、PDF形式で作成されたデータの「電子定款」も認められています。電子定款では、従来の定款で必要とされてきた印紙税が不要です。
定款に記載されている内容
会社や法人を設立するときに必要となる「定款」ですが、いったいどのようなことが記載されているのでしょうか。会社のルールブックでもある定款に記載する事項は、次の3つに分類されています。
ここでは、3つの定款記載事項について詳しく見ていきましょう。
絶対的記載事項
定款の絶対的記載事項として定められている項目を記載していない場合、定款は無効とみなされます。絶対的記載事項は、会社法に明記されており、基本的に定款の認証を受ける時点で記載されている必要があります。
株式会社の定款における絶対的記載事項は、以下の通りです。
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額・最低額
・発起人の氏名や名称、住所
出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
相対的記載事項
定款の相対的記載事項とは、必須記載項目ではありませんが、記載して初めて効力が発生する項目のことです。相対的記載事項も、会社法に定義されています。
株式会社の定款における相対的記載事項は以下の通りです。
・現物出資に関する事項
・財産引渡に関する事項
・株式の譲渡制限に関する規定
・株主総会などの招集通知を出す期間の短縮
・役員の任期の伸長
・株券発行の定め
出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
任意的記載事項
任意的記載事項とは、絶対的記載事項でも相対的記載事項でもない項目で、決めても決めなくてもよく、決めたときも定款に書かない選択が許される内容です。つまり、定款への記載が義務付けられておらず、禁止もされていない内容が任意的記載事項といえます。
書かなくてもよい項目とはいえ、定款に記載しておけばその項目の内容が明確になることから、記載しておくことをおすすめします。
ただし、事項の内容が頻繁に変更されることが予想される場合は、定款に記載してしまうと変更のたびに定款変更も必要となってしまうため、定款には記載しない方がよいでしょう。
任意的記載事項には、事業年度や役員の数、定期株主総会の招集時期などがあります。
定款変更が必要になるときとは
定款は、1度作成したら変更することがない、というものではありません。定款の記載内容に変更があれば定款を書き換え、アップデートする必要があります。ただし、どの事項が変わったときでも必ず定款変更が必要になるというわけではありません。
基本として、絶対的記載事項に変更があれば、定款変更も必須だと理解しておきましょう。ここでは、どのような場合に定款を変更しなければならないのかについて、詳しく解説していきます。
会社名の変更
会社名は、定款の「商号」という項目であり、「商号」は絶対的記載事項です。会社名を変更したときは、必ず定款を変更しなければなりません。
会社名の変更が確定したら、速やかに定款の変更も行いましょう。商号は登記事項でもあるため、商号登記も必要になります。
出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
出典:商業・法人登記 Q&A|法務省
参照:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji69.html#18
事業目的の変更
事業の目的も定款の絶対的記載事項なので、変更になった場合は定款変更も必須となります。目的変更が確定したら、速やかに定款変更の手続きをしましょう。また、登記事項でもあるため、商業登記が必要になります。
出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
本社(本店)の移転
本社・本店の住所は定款の絶対的記載事項なので、移転した場合は定款変更が必要になります。本社・本店の住所は、番地まで細かく定款に記載されているとは限らないため、実際に移転していても定款変更が不要の場合もあります。
登記では、本社・本店の住所を番地まで記載しなければならないため、移転したときの登記は必須です。
出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
出典:よくある質問|茨城司法書士会
参照:https://www.ibashi.or.jp/faq/faq.php?id=15
増資
資本金の額は、定款の絶対的記載事項ではありません。資本金は株式の発行により変動する可能性も高いことから、定款に記載していない会社もあります。資本金を定款に記載している会社では、増資の際は定款変更が必要になります。
資本金の額は登記事項であるため、増資の際は定款変更を伴う会社も定款変更をしない会社も一律で登記が必要です。
任期や役員の数の変更
役員の任期や数は定款の任意的記載事項です。定款に役員の任期や数を記載している場合は、任期や数に変更があれば定款変更が必要になります。
役員の任期や数は登記事項ではないため、基本的に登記は不要です。しかし、任期や数を変更したために役員を変更した場合は、登記も必要になります。
出典:役員の変更の登記を忘れていませんか?|法務省
参照:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00091.html
定款変更の際に必要なこと
定款変更が必要になる事項の内容を変更しようというときは、役員だけで勝手に決議するわけにはいきません。定款変更には会社法で定められたルールがあり、通常の決議条件よりも厳しい条件が課せられています。
ここでは、手続き面から定款変更について必要なことを見ていきましょう。
株主総会での特別決議
株式会社で決議を取るとき、通常の議題であれば「普通決議」で採択されます。普通決議とは、株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主が持つ議決権の過半数の賛成を得ることです。役員の選解任は、普通決議で行われます。
定款変更は普通決議より採択条件が厳しい「特別決議」で採択されなければなりません。特別決議とは、普通決議と異なり出席した当該株主の議決権の「3分の2」の賛成が必要になります。
出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
株主総会の議事録を保存・法務局へ提出
設立時の定款は、公証人から認証を受けなければなりませんが、定款変更では公証人の認証は不要です。
定款を変更したら、定款変更に関わる事項の変更承認を得た株主総会議事録を添付し、法務局に提出して登記します。株主総会議事録が添付されていれば、特別決議の条件を満たしていることを確認できるためです。
出典:株式会社変更登記申請書(取締役会設置会社で役員(取締役・代表取締役・監査役)全員が重任する場合))|法務局
参照:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page8_000001_00017.html
定款変更の費用とは
定款変更には費用がかかることもある、ということもご存知でしょうか。定款は会社にとって必要な情報をまとめたものであり、会社法で定められたルールに則って変更手続きを取ればそれで終わりと考えている方も少なくないでしょう。
ここからは、定款変更に伴う費用について見ていきましょう。
登録免許税
商業登記の登録免許税は、登記する事項によって決まっています。ただし、会社の規模(資本金の額)によって、同じ登記事項でも異なる登録免許税となる場合もあります。
定款変更により登記が発生するのは、絶対的記載事項の「商号」「発行可能株式総数」「本店・支店の所在地変更」や、相対的記載事項・任意的記載事項の「株券の発行」「取締役会の設置」「監査役の設置」「資本金の額」などです。
多くの登録免許税が定額ですが、資本金の額を増資する場合は、増資した金額をもとに登録免許税を算出しなければなりません。登録免許税は1事項3万円が基本と考えておけば、必要な費用を概算できます。
出典:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
司法書士報酬
登記手続きは、専門家ではなくても行えることになっています。会社の場合は、代表者である代表取締役が行えます。この場合、当然登録免許税以外の費用はかかりません。
しかし、実際には代表取締役は忙しく、登記手続きに必要な書類を集めたり、内容を確認したり、登録免許税を計算したりすることは難しいでしょう。登録免許税の計算は煩雑なため、登記する事項が多ければ間違えてしまう可能性も高くなります。
会社の代表者が登記に関する専門知識がある場合を除き、専門家である司法書士に依頼して報酬を支払った方が、無駄な時間を費やすことなく登記できます。
定款変更をするとき注意事項
定款は会社の決まり事を明記したものですが、自社のものだからといって勝手な手続きで変更することはできません。
ここでは、定款変更の際に見落としてしまいそうな注意点について解説していきます。定款内容を変更することだけに注力してしまうと、定款を変更したことに伴って必要になる手続きを失念してしまうこともあるので、一連の手続きとして把握しておきましょう。
登記が必要となることがある
変更した定款の項目によっては、登記しなければなりません。定款に記載されているすべての事項が登記されているわけではないため、登記されている事項のみに限られます。
定款変更時に必ず登記が必要になるわけではないことから、うっかり失念してしまうことがないよう、登記が必要になる事項を把握しておきましょう。
以下に、変更登記が必要となる定款事項の代表的なものを紹介します。
変更登記が必要な場合 | 変更登記 |
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商号の変更 | 新たな商号による商号変更登記が必要 |
目的変更 | 複数の目的を登記している場合、変更した部分だけでなく、すべての目的を登記し直す |
本店所在地の変更 | 本社を移転した場合、定款変更が必要ない場合でも登記は必要 |
発行可能株式数の変更 | 増減値ではなく、変更後の発行可能株式数を登記 |
公告方法の変更 | 定款に記載している公告方法を削除した場合も「公告方法 官報」として変更登記が必要 |
定款変更後の登記に期限がある
定款変更に関する登記には期限が設けられています。期限を過ぎた場合でも登記することは可能ですが、登記義務を怠ったとして過料が科されることもあります。定款変更に関連する登記の申請期限は、定款変更が生じた日から2週間です。
任務懈怠とみなされることがないよう、定款変更の決議が確定したら、速やかに登記手続きへ進みましょう。なお、過料が科される場合は、会社に対して科されるのではなく、登記義務を負っている代表者に科されることになります。
出典:役員の変更の登記を忘れていませんか?|法務省
参照:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00091.html
出典:会社法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
支店(支社)での登記が必要になる場合もある
支店や支社を持つ会社の場合、定款変更の内容によっては、支店や支社の所在地でも登記が必要になります。支店や支社の所在地には「商号」「本店所在地」「会社成立の年月日」「支店所在地」などが登記されています。
本店・本社と支店・支社が同じ法務局の管轄内にある場合と、別管轄の場合とで、登記手続きは異なります。手続きの必要の有無や申請内容については、専門家に相談して確実に行いましょう。
定款変更にかかる費用を理解しよう
定款変更は、株主総会の決議をもって行われ、定款を書き換えれば完了する、というわけではありません。変更内容によっては、登記手続きが必要になり、登記には時間も費用もかかります。
また、定款変更にかかる費用は一律ではありません。定款変更する際の費用はもちろん、期間も考慮して慎重に行いましょう。
Midworks おすすめの案件例
- 芝公園駅 / 港区月額80万〜90万円
- 新宿駅 / 新宿区月額70万〜90万円
- 本郷三丁目駅 / 文京区月額80万〜90万円
- 渋谷駅 / 渋谷区月額70万〜120万円
- 京橋駅 / 大阪市城東区月額100万〜200万円