フリーランスが源泉徴収されている場合の手続きとは?確定申告の注意点を解説
「クライアントに送った請求金額より、支払われた金額が少ないけどどうして?」
「源泉徴収されているって聞いたけど、確定申告ってしないといけないの?」
このように源泉徴収という言葉を聞いたことはあるけど、具体的にどのような仕組みなのか、何をしなければいけないのか迷っている人も多いでしょう。
この記事では、フリーランスの方がクライアントから源泉徴収されている場合の対処法、具体的な手続きの流れなどを紹介します。
この記事を読むことで、源泉徴収制度についての基本的な知識や請求書などの書類の書き方、源泉徴収されている場合の確定申告の具体的な手続き方法を理解できます。
フリーランスの方にとって、確定申告のやり方によっては手取り金額が変わるケースもあります。源泉徴収制度について理解を深めたい方はぜひ読んでみてください。
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フリーランスが源泉徴収されていることもある?
フリーランスの方がクライアントに請求書を出した場合、請求金額より入金額が少ないというケースがあります。そのような場合は、クライアントが源泉所得税を差し引いて支払い、差し引いた所得税はクライアントが代わりに税務署へ納税しています。
この一連の流れを源泉徴収といいますが、フリーランスの方の報酬のすべてが源泉徴収の対象となるわけではありません。では、どのような報酬が対象になるのか、源泉徴収されている場合はどうしたらいいのかという点について、解説していきます。
出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
フリーランスは確定申告が必要
会社員やフリーランスに限らず、給与収入や事業収入などの所得があれば所得税を納める義務があります。
会社員などの給与所得者であれば、会社が源泉徴収を行い年末調整によって精算されますが、フリーランスのように給与収入以外の所得がある場合は、自身で確定申告を行いその年の所得税を計算する必要があります。
なお、会社員として年末調整している場合であっても、副業としてフリーランスの仕事をしており、フリーランスとしての年間の所得が20万円を超えている場合は、確定申告が必要です。
出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
フリーランスが知っておきたい源泉徴収とは
源泉徴収とは、報酬や給与の支払者が支払うべき金額から所得税を事前に天引きし、支払いを受ける者の代わりに国に所得税を納付する制度です。
支払いを受けるフリーランス側は、特別に手続きをする必要はありませんが、源泉徴収されている金額分だけ手取り額が減ることとなります。
しかし、フリーランスの受け取る報酬のすべてが源泉徴収されるわけではありません。源泉徴収が必要な報酬・料金は国が一律に規定しています。
ここからは源泉徴収の対象となる報酬の解説や、源泉徴収額の計算方法などについて紹介します。
源泉徴収の対象と種類
フリーランスが受け取る報酬の内、源泉徴収の対象となるのは以下のように列挙されています。
①原稿料、講演料、デザイン料
②弁護士、公認会計士、司法書士などに支払う報酬・料金
③社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
④プロのアスリートやモデル、外交員などに支払う報酬・料金
⑤映画、演劇、その他芸能人の出演報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
⑥宴会で接待を行うホステス・コンパニオン、ホステスなどに支払う報酬・料金
⑦プロのアスリートなど、役務の提供を約することにより支払う契約金
⑧広告宣伝の賞金や馬主に支払う競馬の賞金
フリーランスの受け取る報酬で対象となることが多いのは、①の「原稿料、講演料、デザイン料など」です。名目が「謝金、取材費、交通費」であっても、実態が報酬である場合は源泉徴収の対象となるので注意してください。
出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
源泉徴収票の見方
源泉徴収票とは給与収入のある方が会社から交付される書類です。源泉徴収票には主に次の内容が記載されています。
・支払金額:1年間に受け取った給与・賞与の金額の合計額
・給与所得控除後の金額:支払金額から給与所得控除額を差し引いた金額
・所得控除の額の合計額:基礎控除や扶養控除、社会保険料控除など各種控除額の合計額
・源泉徴収税額:1年間に納めた所得税額
源泉徴収額の計算方法
源泉徴収額ですがクライアント側で計算されるケースと、場合によっては自分で計算し請求書へ記載するケースがあります。
源泉徴収額の計算方法は報酬の種類やいくら報酬を受け取るかによって変わりますが、ここでは「原稿料、講演料、デザインなど」に該当する報酬について具体的な数字を例にして説明します。
1回で支払う金額が100万円以下
まず1回で支払う報酬金額が100万円以下の場合は、源泉徴収額=報酬金額×10.21%で計算します。
報酬金額が50,000円の場合は、50,000円×10.21%=5,105円(源泉徴収額)です。
なお、請求書上で報酬金額と消費税額を分けて記載している場合は、税抜きの報酬金額をもとに10.21%を掛けます。特に請求金額と消費税額を分けて記載していない場合は、総額に10.21%を掛けて計算してください。
出典:Ⅳ 税額の求め方(令和4年分)|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/shikata_r04/pdf/09.pdf
1回で支払う金額が100万円を超える
1回の報酬金額が100万円超の場合は、(報酬金額-100万円)×20.42%+100万円×10.21%で計算します。
報酬金額が200万円の場合は、100万円×10.21%+(200万円−100万円)×20.42%=306,300円(源泉徴収額)です。報酬金額が100万円超となる場合は、計算方法が少し複雑になるため注意してください。
出典:Ⅳ 税額の求め方(令和4年分)|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/shikata_r04/pdf/09.pdf
フリーランスが源泉徴収されているパターンとは
前述のとおり、フリーランスとして報酬を請求する際に源泉徴収されるかは業務の内容によって変わります。
一例として、フリーランスであるエンジニアが業務に関する執筆や講演を行った場合は源泉徴収の対象となりますが、プログラミングやホームページの作成などを行った場合は源泉徴収の対象外となります。
自身の業務が源泉徴収の対象となるか分かりやすい場合は良いですが、分からない場合は、請求金額に対し支払金額が少ない場合は源泉徴収されている可能性が高いです。
しかし、クライアントの支払いミスなどの場合もありますので、自身の業務が源泉徴収の対象となるかどうか判断できるようにしておきましょう。
支払調書とは
支払調書とは、クライアントが源泉徴収対象となる報酬などを支払った場合に税務署へ提出が義務付けられている法定調書です。
支払調書を作成した企業は、翌年の1月末までに支払調書に法定調書合計表を添付して税務署へ提出が必要となります。
支払調書は発行されない場合もある
支払調書は、作成した企業にとっては税務署への提出義務のある書類となりますが、支払調書の対象となる報酬や料金の支払先への交付義務はありません。したがって、フリーランス側からは支払調書の作成が行われているか確認はできません。
もし支払調書が交付されていない場合であっても、請求金額や支払金額などをしっかりと確認し確定申告の漏れがないように注意しましょう。
支払調書が税務署へ提出されており、確定申告の内容と支払調書の内容にずれが生じた場合は税務署によって確認が行われる場合があります。
源泉徴収されている場合の記帳方法
もしフリーランス自身の業務が源泉徴収対象だった場合、請求金額から源泉徴収額が差し引かれて入金されます。
差し引かれた源泉徴収額は自身の所得税の前払いとなりますので、帳簿を記帳する際には差し引かれた源泉徴収額についても適切に処理し、確定申告の際に精算しなければいけません。
ここでは、源泉徴収された場合の具体的な仕訳方法について解説します。
源泉徴収されている場合の仕訳の例
請求金額から源泉徴収されている場合の、具体的な仕訳方法を「現金主義」と「発生主義」の二つの処理方法を例に解説します。
・現金主義の場合(例:請求金額 110,000円、源泉徴収額 11,231円)
・入金日の仕訳
「現金預金」98,769円 / 「売上高」110,000円
「仮払税金」11,231円
「売上高」は入金額ではなく、源泉徴収額を差し引く前の請求金額となるため注意しましょう。「仮払税金」の勘定科目に指定はありませんが、1年分の集計が必要となりますので、分かりやすい科目名で処理することをおすすめします。
・発生主義の場合(例:請求金額 110,000円、源泉徴収額 11,231円)
・報酬を請求した日の仕訳
「売掛金」110,000円 / 「売上高」110,000円
・入金日の仕訳
「現金預金」98,769円 / 「売掛金」110,000円
「仮払税金」11,231円
「現金主義」と「発生主義」のどちらで処理するかは自由ですが、帳簿の記帳方法が青色申告を受ける際の要件などで変わるため、どちらで処理するかは個々で検討が必要でしょう。
フリーランスが源泉徴収された場合に必要な手続きとは
前述のとおり、源泉徴収された金額はフリーランス自身の所得税の前払いとなります。報酬から天引きされて納付された源泉所得税は、確定申告を行うことによって精算されます。
源泉徴収された場合の確定申告の注意点
フリーランスとして活動している場合は、源泉徴収の有無にかかわらず毎年確定申告が必要となります。
しかし、確定申告を行う上で源泉徴収されている場合とされていない場合では処理の方法が変わり、誤った申告をしてしまうと税金の二重払いになってしまうケースもあります。
ここからは確定申告で損をしてしまわないように、注意点などを解説していきます。
こまめに記帳しておく
確定申告の期限は翌年の3月15日であるため、年に1回の事務手続きとなります。そのため、1年分の資料を貯めておき、確定申告時期にまとめて処理しようという方もいるでしょう。
しかし、まとめて処理しようとすると、何か月も前の資料を確認することになるため、何に使った経費だったか分からない場合や、書類を紛失して確認ができないということが起こりえます。
本来経費としてあげられるものが内容不明により処理できなければ、それだけ所得が増え納税額が増えてしまいます。毎日記帳をする必要はありませんが、1週間~1か月単位などこまめに記帳しておくと良いでしょう。
請求書には消費税額を別に記載しておく
請求書の消費税の取り扱いで源泉徴収対象となる金額が変わってくるので注意が必要です。
請求書上で消費税を分けずに請求した場合は、消費税額を含んだすべての金額が源泉徴収対象になります。しかし、売上金額と消費税額を分けて記載している場合は、消費税額を除いた売上金額のみが源泉徴収対象になります。
消費税額を含む場合の方が手取り金額は減ってしまいますので、消費税額は分けて記載するようにしましょう。
復興特別所得税が必要であることを理解しておく
現在の源泉徴収額の税率である10.21%には、復興特別所得税が含まれています。復興特別所得税は、東日本大震災の復興のために平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に徴収されます。
もともと源泉徴収額の税率は10%でしたが、そこに復興特別所得税が0.21%加算されることになったためです。実務上は合算した10.21%で計算しますが、その中には復興特別所得税が含まれていることを覚えておきましょう。
出典:[税のしくみ] 税の種類と分類|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page02.htm
何より確定申告することを忘れない
フリーランスとして活動している以上、確定申告は必ず必要となります。支払調書があればそれに基づいて申告し、もしなければ自身で記帳している帳簿に基づいて確定申告書を作成してください。
確定申告の際に気を付けるべき点は、報酬から源泉徴収額を差し引かれている場合にはその源泉徴収額をしっかりと集計し、確定申告書作成時に源泉徴収税額を必ず記載することです。
この記載を忘れると所得税を二重に納付してしまうこととなるため、集計ミスや記入ミスのないようにしましょう。
フリーランスが源泉徴収されている時は確定申告で手続きしよう
この記事では、フリーランスが覚えておきたい源泉徴収の概要や実務的な処理方法などを紹介してきました。
フリーランスとして受け取る報酬のほとんどは源泉徴収の対象となるため、源泉徴収について正しく理解し、正確に確定申告を行う必要があります。
新たにフリーランスとして活動を始めた方や、確定申告に馴染みがない方は、ぜひこの記事を参考にしフリーランスとしての知識を深めましょう。